主従
その鞭とは、いくつかの偶然が重ならなければ、出会うことは無かったのだと思う。年の暮れも押し迫った2009年12月。主と常用しているホテルの一室に入ったところ、黒いソファーの片隅にその鞭はあった。以前SMホテルだったそのホテルは、諸事情により今はそ…
その日、お会いした時から、主の携帯にはひっきりなしに仕事の電話がかかってきていた。最近は昼夜関係なく電話が来るんだ、という言葉に嘘はなく、朝は6時半に電話で起こされ、夜は0時過ぎにもかかってくるところを目の当たりにすると、さすがに睡眠の質が…
「トイレには一緒に行く」という唯一に近い約束をして以来、外出時を除き主と過ごす時間に一人でトイレに行くことはほとんどない。有無を言わせない命令ではなく、長い時間をかけて心の底から「一緒にトイレに行くことが嬉しい」という気持ちに変わっていく…
奴隷、玩具、ペット、おもちゃ、便器etc. 主従関係にあってもなくても、SMの関係を結んでいるボトム側を示す言葉として、そのような言葉をよく見聞きする。現実での扱いはそれぞれとしても、二人の関係性において、精神的な意味で「上の立場の者が下の立場の…
お店を出たのは、シンデレラが灰かぶりに戻る時間を超えていた。主には帰ることだけを伝え、翌日の夜、時間をとってゆっくりと電話で話をした。「洋服を脱がないこと、女性にのみ身体を委ねることをボーダーにしました」少し緊張をしてそう伝えたところ、主…
フェテッシュバー、SMバー、ハプニングバーetc.様々な名前がついているそのような場所に、初めて足を踏み入れた。誘ってくださったのは旧知のS男性のO氏。煌びやかな街で3年半ぶりにお会いして食事とお酒を楽しんだ後、「行くか?」と問いかけられた言葉に私…
何度目かの吊りを終えた深夜のコテージ。早春の夜はまだとても寒く、身体の火照りが治まってくると足先から深々と冷気が忍び寄ってくる。ベッドの上には、バラバラに解かれた縄が十数本。色も太さもさまざまに絡まり合っている。梁から下がる縄は、浮遊した…
"言わない"言葉で書き切れなかったことの1つに、主側の意図がある。主従である関係の場合、して欲しいことを言わせる主と、言わせたがらない主、どちらの方が多いのだろうか。 私の主の基本的なスタンスは後者。SM的行為に関して「○○が好き」という会話は良…
まだ実際にSMの世界に足を踏み入れる以前、主従関係を結んでいる主に対して"して欲しい行為"を伝えることは、望ましくないことだと思っていた。なので、SM系blogで従の側から「縛って欲しい」「厳しく責めて欲しい」など、「○○して欲しい」と書かれた言葉を…
コテージに到着したのは、太陽が夕陽になる頃だった。前夜はギリギリまで仕事をしていたので、主にお会いできて喜しい反面、疲れは隠しようもなく、長距離運転の疲れも相まって欠伸を何度か噛み殺してしまう。荷物を片付け、海に面した大きな窓を向いたソフ…
梁のある部屋、という条件で選んだ古民家風のコテージは、海を見下ろす小高い丘の上にあった。主と久しぶりの再会を果たした新幹線の駅から、観光気分であちこち寄り道をしながら車で走ること数時間。素敵なオーナー夫妻が経営しているそこは、数軒建つコテ…
共に歩む年月を重ねることによって失うものと得るものがあった。例えば、胸を強く締めつけられるほどに息苦しい慕う心。逢えない日々を想って流す涙。それらのものを歩く道の途中に一つひとつ置いていくのと引き替えに育まれたものは、私の中に隅々と行き渡…
主とお付き合いを始めてまだ日が浅い頃、自慰をしたときは報告をするように言われた。その意図は、私の性に関する動向を把握しておく、ということだったように思う。好き勝手に触るなと禁止されることや、自慰をしろと強制されることはなくても、行為を報告…
主と出会って丸3年が過ぎた。入院と転勤で過ぎた2年目に比べると、安定しながらも関係を深めた3年目だったように思う。丸2年目を過ぎた頃、主との関係が本当の意味で安定するに従って、私は書く言葉を持たなくなってきた。仕事が輪をかけて忙しくなって…
「永い関係を結ぶことが決まった時点で、貴方の首輪を注文しようと考えています。」初めてお会いする日まであと数日、どんな方なのだろうと期待と不安を抱いていた頃、メールで届いた主からの言葉。当時の私は、首輪というものに全くといって良いほど興味を…
先日お会いしたときのこと。縄で上半身の自由を奪われ、手拭いで視覚を奪われた状態で壁際に置かれたビーズクッションに凭れかかり、私は主の前に脚を広げていた。見えてはいなかったけれど、主は胡坐をかいて私の脚の間に座っていたのだと思う。獲物を前に…
主と電話をしていたときのこと。ひょんなことから、「今までで一番印象に残っている(SM行為をした)日」の話になった。主がまず挙げたのは、初めて出会った日。その日のことは、私も印象に残っているけれど、SM行為として印象に残ったのとはちょっと違う。…
先日、主と出会ってから2周年を迎えた。お互いの身体にボディピアスをつけてから1年。少し前からこの日にピアスのゲージを上げよう、という話が出ていたので、主と一緒に前回と同じスタジオでピアスを購入し、プライヤーを新たに準備するなど、着々と準備を…
主と距離が離れて3ヶ月が過ぎた。西への引越しのとき、「今までと変わらない頻度で会うようにしよう」と言ってくださったとおり、主は時間を作ってくださっているので、会っている回数だけみれば、さほど今までと変わっていないように思う。でも、以前と全く…
ピアスをつける少し前、私は二十数回目の誕生日を迎えた。その日、主は仕事の都合をつけて下さり、私が住む街の近くにある港の見えるホテルを取ってくださっていた。一緒に迎える初めての誕生日。誕生日を共に過ごすことに殊更のこだわりはないけれど、一年…
ピアスに纏わる全てが終わったとたん、私は腰が抜けたように、座り込んだまま動けなくなってしまった。張り詰めていた糸がプツンと切れたようになり、身体中の力が抜けていったように感じていた。まさに放心状態だった。主は動けない私を労わりつつ、「地味…
2006年10月4日、主と互いの身体にボディピアスをつけあった。 主につけてもらうことについては、全く何の心配もしていなかった。主は「いくよ」の声と共にためらいもなく私の身体にニードルを通し、私は貫通した瞬間「痛いっ」と反射的に声を上げたものの、…
私が主に初めてメールを出したのは去年の10月4日。実際にお逢いしたのはもう少し先の話だけれど、主と私の中では何故か10月4日の方が印象深い。そのときはもちろん、一年後にこんな関係になっているなんて想像もしていなかったけれど、迷う心を引きずりなが…
冬に入ったばかりの今年の始め頃、私は2つの決意をしていた。 1つ目は、主にピアスを付けられる決意。 2つ目は、主の身体にピアスを付ける決意。 でも、その決意は春に凍りついたままになっていた。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::…
先日の小旅行の際、淡く期待していたことのひとつに、浴衣での緊縛があった。主は私を飾るものにはあまり興味が無いらしく、セクシーなランジェリーを身に着けていても、「お、いいねぇ」と言ってくださるものの、いつもすぐに脱がされてしまう。結局という…
先月から今月にかけて、かなりしんどい仕事が続いていて、おもに私側の理由で、主とゆっくり話しすらできない日々が続いていた。忙しくて、主のことをゆったりとした気持ちで想う時間すら無い時ほど、ふとした瞬間に身体と心がいつも以上に強く主を渇望して…
『会いたいのに、会うのが怖い』という気持ちを抱えたまま、主に会ってきた。いざ会える日が近づいてくると、嬉しいという気持ちの方が勝ってはきたものの、常に「怖い」という気持ちが心の底に燻っていて、素直に手放しで喜べないまま当日になってしまって…
最近、主と従者としての自分との関係をつきつめて考えて始めてしまい、何だか落ち着かない日々を過ごしている。日常が忙しいがゆえに常に落ち込んでいるわけではないけれど、ふとした瞬間に入り込んでくるその考えは、私をグルグルさせるのには十分で、もう…
日曜日の夜、本当に寝るだけのために、主の家まで行ってきた。数日前に崩した体調はまだ万全ではなかったし、会わない方が身体は楽だとわかっていたけれど、忙しくて身体が辛いとなんだか弱気になってしまい、会いたくて会いたくてたまらなかった。もっと正…
今まで、積極的に『露出をしたい』と思ったことは一度もない。自らの裸体を撮影をして主に送ることはあるけれど、見知らぬ人の前に自分の淫らな姿を晒したいという願望は無いし、どちらかというと見られることに抵抗がある。ただその一方で、矛盾するようだ…